カフェで朗読 vol.17 「本読みの時間」 〜妻の話。つまりは男の姿〜

2010年1月24日(日)

大阪・中崎 Common cafe

 

今回は


初登場・亀山貴也。

3年半ぶり・植村好宏。
(
PEOPLE PURPLE)

初登場・小野真也。

な、フレッシュ?メンバーと、

私、甲斐祐子。

そして

スタッフ・池下敦子
(ちょっと出演)

アーンド

写真撮影(と雑用)・ハラダ

カフェ太陽の塔

で、お届けしました。

 

塩ダレ肉の野菜丼
肉じゃが定食
撮り忘れたロコモコ丼
オリジナルカレー
タコライス

 

さて今回は「妻の話」

夫婦の話、とはちょっと違う。

妻を語る。

妻が語る。

妻の話。

見えてきたのは、夫の姿。

いや、

男の姿?

 

それでは、7組9人の男の姿を夜公演仕様でお楽しみください。


1話目

平野啓一郎作「一枚上手」

夫・好男
妻・聡子
今日から3日間、お互いの携帯電話、交換しない?
な、なんでまた?

 

夫婦間の信頼を深めるための方法だって。

仕事の電話がかかってきたら、すぐに取り次ぐから。何も問題ないでしょう?

 

まさにその時、好男の携帯電話が鳴った。
 

 

長い連休のはじまりだった。

 


2話目

筒井康隆作 「妻四態」より

 

冬眠?お前、冬眠するの?

電話がかかってきたら

何て言やいいんだい?

「妻は今、冬眠してます」

 

笑われるしなぁ。

起こすときは

やっぱりキスするのかなぁ?

眠りの森の美女みたいに。

 

 


3話目

森絵都作 「豆を煮る男」

 

夫は今年もまめを煮るようです。

私(妻)

夫(豆を煮る男)

夫は、

黒豆を愛おしそうに手ですくいました。

 

「よく育ったね。よく実ったね。」

 

一粒一粒に労いの声をかけています。

 

 

小野パパの顔が・・・・・・・・

 

12月30日

ついに夫が動き出しました。

 

12月31日

夫が黒豆を煮始めます。

元旦は毎年、義父母宅の居間に

全員揃って遅めの朝食をいただきます。

 

義母が何かの儀式のように

おせちのお重を開くのです。

 

黒豆はおせち料理の主役になりえない事を、

彼はいつもこの日この瞬間に思い知るのです。

 

「ほら、黒豆も美味いぞ。花音も食べなさい。」

 

いやだ。

黒豆って虫みたいなんだもん。

虫!!!!!!!

どこが虫みたいなんだ!?

「豆はもう今回で終わりにするよ」その一言を何度聞かされた事でしょう。

しかし、夫宛の年賀状にあるのは黒豆関連のコメントばかり。一枚、また一枚と読み進めるにつれ・・・・

「今年はどこの畑をみにいこうかな」

こうして例年の習慣は継続されていくのです。


そう言わないできかせてくれよ。

もうよして。

 

衝撃の大どんでん返しは、ぜひ原作で。

 


4話目

筒井康隆作 「妻四態」より

 

えーっ?お前、翔べるの?

同窓会へさ、お前が

バサバサなんて

翔んで降りていったら、

心臓の悪い人なんか

死ぬよ?

茜色の空の下をさ、

髪の毛なびかせて

翔んでたら綺麗だけど、

でもね?

初めて見る人は

そう思わないの

びっくりするんだよ、やっぱり。

 


「突然ですが」

リドルストーリーをご存知ですか?

物語中に謎が提示され、解決は読者に委ねる

というものです。

かの文豪、芥川龍之介が大正十年に発表した、

『藪の中』もその名作のひとつです。

 

 

前説もどき:編集・甲斐祐子

 

5話目

芥川龍之介作 『藪の中』より

「巫女の口を借りたる死霊の物語」

「清水寺に来れる女の懺悔」


妻はうっとりと顔を擡げた。

俺はまだあの時ほど、美しい妻を見た事がない。

 

 

妻は確かにこう言った。

 

「ではどこへでも連れて行ってください。」

 

夫は、

その刹那の目の中に、一切の心を伝えたのです。

 

怒りでもなければ、悲しみでもない、

 

ただ私を蔑んだ、冷たい光だったではありませんか。

 

一度でもこのくらい憎むべき言葉が、

一度でもこのくらい呪わしい言葉が、

一度でもこのくらい、

(迸るが如き嘲笑)

 

 

 

妻は気が狂ったように、何度もこう叫びたてた。

 

「あの人を殺してください」

 

夫は私を蔑んだまま

「殺せ」

と、一言云ったのです。

 

私は夫の胸へ、ずぶりと小刀を刺し通しました。

 

俺の前には妻が落とした、小刀がひとつ光っている。

俺はそれを手に取ると、一突きに俺の胸へ刺した。

苦しみは少しもない。

 

 

誰か、

その誰かは見えない手に、

そっと胸の小刀を抜いた。

俺はそれきり永久に、中有の闇へ沈んでしまった。

 

(脚色:甲斐祐子)


前半終了。

ちなみに夜公演の客席です。

もしかして、劇団ババロワーズの藤原タケシさん?

「俺、参上!」


6話目

筒井康隆作 「妻四態」より

 

アーッ!卵産んでる。

いやだよ俺、

卵抱いたりするの。

こいつの生年月日、

卵産んだ日と

孵化した日と

どっちになるんだろうな?

 

 


 

7話目

筒井ともみ作 「リベンジ」

別れてくれないか?
なんで?

結婚前、

「料理なんて出来なくたっていいさ」

と言っていた夫は4年後、

「俺は美味いもんが食いたいんだ。お前には無理だろ」

と、言い捨てて、別な女のところへ行った。

数ヶ月、モグラのように泣き暮らした私は、一枚のビラに吸い寄せられるようにして、「料理見習い人」になった。

あれから3年近くの時間が過ぎた。

この間に気づいたこと。

料理というのはつくる人も食べる人も幸福にしてくれるものだ。

暖簾をくぐって店に夫が入ってきた。

3年ぶりに見る夫だった。

 

「おい。

お前がそうして欲しい

と言うなら、

お前のところに

帰ってやってもいいんだぞ」

まったく、

何をおっしゃるやら。

私は小さく笑ってしまう。

夫は私のことを3年前のままの私だと思っているのだろうか?

おい、夫。

6時になったら、私のつくった肉じゃが食べにおいでよ。

グズグズしてると手遅れになっちゃうぞ。

あなたを受け入れるか追放するか、

それを決められるのは、この私なのだから。

 

 

カットしまくりでお送りしました。

原作を読むとまた違った味わいがあるかと・・・・

 


話目

筒井康隆作 「妻四態」より

 

人間がさぁ、脱皮だなんてしちゃいかんのよ。

あ、

そばかすなくなってる。

黒子もシミもない!

こうやって広げると、

これやっぱり

だいぶエロチックだよなぁ。

おーい、これ、お前の20歳代最後の記念にとっとくぞー。

箪笥にしまっとくからなー。

 

 

人の皮ですよ・・・・

 


9話目

芥川龍之介作 『藪の中』より

「多襄丸の白状」

あの男を殺したのはわたしです。

しかし女は殺しはしません。

ではどこへ行ったのか?

それはわたしにもわからないのです。

わたしはとうとう思い通り、

男の命は取らずとも、女を手にいれる事はできたのです。

 

そうです。

わたしはその上にも男を殺すつもりはなかったのです。

 

女は突然わたしの腕へすがりつき、

あなたが死ぬか、夫が死ぬか、どちらか一人死んでくれ、

そのうちどちらにしろ、生き残った男に連れ添いたい

そう喘ぎ喘ぎ云ったのです。

 

わたしはその時猛然と男を殺したい気になりました。

 

卑怯な殺し方はしたくありません。

わたしは男に太刀打ちをしろと云いました。

わたしの太刀は、二十三合目に男の胸を貫きました。

 

 

どうせ一度は樗の梢に、懸ける首と思っていますから、

どうか極刑に遇わせてください。

 

夫は私を蔑んだまま、・・・と一言云ったのです。

わたしはその時猛然と、男を殺したい気になりました。

妻はたしかにこう云った。

わたしの念頭にあったのは、ただこう言う一事だけです。

「ではどこへでも連れて行ってください」

「殺せ」

「妻にしたい」ただこの一事だけです。

 

 

(脚色:甲斐祐子)


10話目

重松清作 「朝日が向かっています」

九州。

日本の西端に近いこの街で暮らし始めて一年になる。

不惑を過ぎての単身赴任である。

「都落ち、ですよね」

読み物作家のSは小さくうなづいた。

「一番きつかったのは、いつ頃ですか?」

「秋の終わりでしたね」

東京で生まれ育った私にとって

九州はまったくの未知の土地だった。

「ここ、東京よりずっと西にあるでしょう。朝が遅いんです。

目覚まし時計で起きてもまだ外は暗いんです。」

 

独りでしたたか酔った私は、東京に電話をかけた。

妻に愚痴をこぼした。

「奥さんは何ておっしゃってました?」

「相槌をうつだけで、たいしたことは言わなかったと思いますよ、電話では」

 

長電話をした翌朝、まだ外が暗い頃、ファックスが届いた、カミさんから。

 

「朝日が、いま、そっちに向かいました」

 

 

ちょうど東京は、夜明けの時間だった。

 

「何なんでしょうね、

カミさん、

面と向かったらそんな洒落た事言うような奴じゃないんです、

ほんと、

もう、

まいっちゃいますよね・・・」

 


おまけ

さだまさし作 「関白宣言」

言わずと知れたあの名曲?

 

お前を嫁に・・・

俺は浮気は・・・・
しないんじゃないかな・・・・
俺より先に・・・・
必ず言うから

 

脚色:甲斐祐子・亀山貴也


という訳でありがとうございました。


 

それでは、昼公演をランダムで。

 

 


全員集合。


 

改めまして。

夫・その1  亀山貴也(かめやまたかや)

開拓者精神を持ち、
人の仲を取り持つ、
楽天的な、
放浪主義者の、
新婚さん。

 

夫・その2  小野真也(おのしんや)

心清く、
容貌美しく、
エネルギー旺盛で、
金銭感覚豊か。
でも、娘に弱い。

 

夫・その3  植村好宏(うえむらたかひろ) 劇団PEOPLE PURPLE所属

気性が激しく、
現実主義者、
傍若無人で、
正直者な、
甘党。

 

妻  甲斐祐子(かいゆうこ)

酒と、
男と、
お金が、
好きな、
乱暴者。

 

どうしてここまで自虐的・・・・

 

某占いより引用しました。

 

 

という事で、

ご来店ありがとうございました。

 

次回公演は2010年5月9日(日)です。

皆様のお越しをお待ちしております。

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